「ニコニコのすべて(だいたい)を地上に再現する」をコンセプトにした、ニコニコ超会議実行委員会が毎年主催するイベント「ニコニコ超会議2022」が4月23~30日にかけて開催されました。今回は3年ぶりとなるリアル開催が実現し、会場の幕張メッセには29~30日の2日間合計で96,160人(※主催者発表)が来場しました。
筆者こと鴫原は29日に会場へと足を運び、展示内容や来場者の様子をほぼ終日取材しました。以下、「超ゲームエリア」およびゲーム関連の展示に絞ったうえで、筆者が会場で気付いた雑感などをまとめてみましたので、ぜひご一読いただければ幸いです。
「超ゲームエリア」のメインステージでは、実況者たちが多数出演し、賞金を賭けて対戦するゲーム実況を披露していたほか、「ドラゴンクエストX」「龍が如く」シリーズなどの最新情報を伝えるトークイベントが行われました。
ほかにも「メタルマックス」や「ロックマン2」といった懐かしのタイトルを使用して、出演者が最短のプレイ時間でクリアを目指す「超RTAブース」や、視聴者も実況配信中のゲームに参加できる配信プラットフォーム「fingger」の体験コーナーなどが用意されていました。また「超ゲームエリア」とは別の場所に設けられた「超『#コンパス』ステージ」には、イベントステージと最新リズムゲーム「#コンパス ライブアリーナ」の体験コーナーが用意され、多くの来場者が訪れていました。
今回のゲームに関する出展は、初期の「ニコニコ超会議」に比べると新鮮味は特になかったな、というのが筆者の率直な印象でした。その理由はやはり、本イベントが始まった2012年当時と違って、今ではゲーム実況、あるいはゲーム関連イベントの配信が世間的に当たり前の存在となったからでしょう。
過去に任天堂が協賛したうえで実現した、当時は発売前だった「スプラトゥーン」の体験エリアをはじめ、「ドラクエブース」や「超ポケモンブース」など、ファン注目のタイトルの出展コーナーが前述の「#コンパス」以外は皆無だったのもその一因と思われます。あるいは筆者も当時、あまりの素晴らしさに度肝を抜かれた「スプラトゥーン」のシオカラーズのライブのような、新時代の到来を感じさせるイベントが見られなかったせいもあるかもしれません。
とはいえ、今回はコロナ禍が続く状況にありながら、久々にリアル開催を実現させただけでもすごいことだと筆者は思います。前述の各ステージでは、来場者のソーシャルディスタンスを保つため間隔をあけて座っていたこともありますが、終日ほぼ満席でとてもにぎわっていたように思いました。
ビデオゲームではありませんが、カードゲームの最新作「絶望スケイプ」の体験イベントを用意した「超遊戯」コーナーも、併設された関連グッズを販売する物販コーナー共々、非常に多くの来場者が訪れていました。同じく、カードゲームの「インパクト・ユー!」のスタンプラリーコーナーも、スタンプラリーのカードが有料であったにも関わらず、終日行列が絶えず盛況だったことも特筆に値するでしょう。
そして今回の取材で、筆者が最も「これぞ、リアル開催ならではの魅力」だと思ったのは、ゲーム実況者たちがステージ出演の合い間に控室から飛び出し、来場者たちとの談笑や記念撮影に応じる即興のイベントを実施していたことでした。普段はモニター越しでしか見たことがない、お気に入りのゲーム実況者に直接会えた来場者の皆さんは、きっと良い思い出になったことでしょう。
主催者からの指示がなくても、実況者たちが自主的にファンサービスを行ったことは素直に好感を持ちました。ただし、中には撮影時に肩を組んだ実況者がいたり、一度に多くの人数で実況者を囲む密集が繰り返し作られたりするなど、コロナ禍にあっては適切な行為だったのか疑問に思える場面も散見されました。ここは次回以降の大きな課題でしょう。
筆者は日本デジタルゲーム学会など、アカデミーの場で若い学生と話す機会が時折あるのですが、ここ数年はゲーム好きなのに「ニコニコ動画」をほとんど話題にしない、あるいはそもそも視聴する習慣がない学生が増えている、と実感しています。
そこで、取材当日は「超ゲームエリア」に限らず、会場全体を回って来場者の様子も観察したのですが、以前に比べて高校生以下の来場者が減った印象を受けました。なお、これはあくまで筆者のパッと見の印象であり、主催者が年齢別の入場者数を公表していないので正確な数字はわかりません。
ですが、KADOKAWAの決算資料を見ると、10代の「ニコニコ動画」会員の年代別シェアはわずかに4.9パーセント(※数字は2022年3月末時点)で、その割合は年々右肩下がりなのは事実です。今後も「超ゲームエリア」をはじめゲーム関連の展示、ひいては「ニコニコ超会議」全体のサービスが長らく継続するためには、リアルイベントならではの楽しさを若いユーザーに訴求し、底上げを図ることも喫緊の課題のように思われます。
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