いよいよ前期の授業もあと2回となりました。「ゲームメディア概論」の目標は「ゲームのおもしろさを分析して、文章で説明できるようになる」ですので、今回と次回でゲームのレビューに挑戦してもらい、それを前期課題の一部としてもらう予定です(出席点50点+Unity演習の課題点25点+レビューレポート25点で計算)。以前より説明していたこともあり、学生もかなり集中して行っていたようでした。
これまで何度も本ブログで説明してきたとおり、ゲームのおもしろさはプレイヤーの主観の産物です。そしてプレイヤーの主観と、各々の経験や価値観、ゲームを遊んでいる時の状況や、一緒に遊ぶ人など、さまざまな要素によって左右されます。ひらたくいえばゲームの評価は、プレイヤーをとりまくコンテキスト(背景情報)によって変わるということです。
しかし、ゲームを、特に開発者が開発中のゲームをレビューする際は、対象プレイヤーのコンテキストをふまえたうえで、できるだけ客観的・構造的なレビューを心がける必要があります。そこで本授業ではEMSフレームワークやMDAフレームワークをはじめとした、ゲームの主要な分析方法を紹介してきました。その上で本授業では、まずゲームを遊んで、分析してもらうところから始めました。
題材に選んだのは福島ゲームジャム2017で制作された「モーうぇ~ぶ」です。本作は画面をクリックして波を起こし、船を動かしてゴールまで到達するタイムを競うアクションゲームです。もっとも、単純に連打が早いだけではタイムが上がらないという、けっこうテクニックを競う内容になっています。もっとも、30時間で開発されたゲームなので、プロトタイプに留まっています。学生がレビューをするには丁度良い規模感なので、昨年に引き続いて今年も使用しました。
とりあえず本授業ではレビューのことは考えずに、ひたらすらいろんな方法でゲームを構造分析してもらうことに専念しています。その上で来週の授業では、ここからトピックを3個くらい選んで、実際に原稿(1500~3000文字)を書いてもらう予定です。ポイントはあくまで「想定される顧客」像を最初に設定し、その立場にもとづいて善し悪しや改善点などを論じてもらうこと。どんなレビューが出てくるか楽しみです。
また、分析中の様子を見て、MDAフレームワークによる分析で詰まっている学生が多いように感じられました。実際、MDAフレームワークは「新しいメカニクスを加えると、どのようなアセスティクスが生まれるか」「特定のアセスティクスを引き起こすためには、どのようなメカニクスが求められるか」といった視点での分析には有効なのですが、ゲーム自体のおもしろさを分析するには、少し使いにくいかもしれません(ちなみに資料にも記載していますが、MDAフレームワークは「あそびのデザイン講座」にも影響を与えています)。