梅雨が明けていきなり暑くなりましたが、皆さん如何おすごしでしょうか? DiGRA 2019が開催された京都の夏を思い出しますね・・・。さて、7月24日に立命館大学ゲーム研究センター主催で行われたアンカンファレンス「ゲームリサーチダンジョン03」で、ヒューマンアカデミー秋葉原校の2021年度前期授業「ノベルゲーム演習」について、実践報告をさせていただきました。1年生のゲームブック演習の内容について、背景と内容を簡単に説明しています。
ただ、15分ほどの内容でしたので、いろいろと端折っています。そこで以下に補足の説明を行います。
授業は1コマ90分で全12回の内容で、1年生と2年生の合同授業で実施しました。本授業が始まったのは昨年度からで、その時は1年生(今の2年生)しかおらず、全員にティラノビルダーでノベルゲームを作らせました。そうした背景があるため、今年度も最初の30分は2年生向けに昨年度の復習を兼ねた講義を行い、次の30分で1年生にゲームブック(を含む分岐型小説)」の講義を行いました。その後、講義が終了したところで課題を出して実習としました。
ただ、これだけでは時間が不足したので、1年生には別途「Web/雑誌ライター」という授業を使って、映画やライトノベルにおけるストーリーの構造分析を行ってもらい、その内容をもとに「ノベルゲーム演習」でゲームブックのプロット制作を進めてもらいました(他に「編集術」という授業があり、そこでも自作ゲームブックのチラシのデザインをしてもらったりしたのですが、そこは割愛します。また、「Web/雑誌ライター」「編集術」は1年生むけの授業で、2年生は受講しません)。いずれにせよ、3つの授業を(1年生向けには)すべてゲームブックを作るためにあてる、というカリキュラムにしました。
回数 | 2年生 | 1年生 |
1 | イントロダクション | イントロダクション |
2 | テーマ設定と情報収集 | ゲームブックについての説明 |
3 | キャラクターとプロット立案 | ゲームブックの構造分析 |
4 | 分岐構造の作成 | ヒーローズジャーニーと三幕構成 |
5 | 企画立案とプレゼン資料の作成 | 民話伝承のリメイク |
6 | 中間発表 | 中間発表の投票 |
7 | ノベルゲーム制作 | プロット作成 |
8 | ノベルゲーム制作 | 分岐構造の作成 |
9 | ノベルゲーム制作 | ゲームブック作成 |
10 | ノベルゲーム制作 | ゲームブック作成 |
11 | 発表会 | 発表会 |
12 | フィードバックの反映と提出 | フィードバックの反映と提出 |
回数 | Web/雑誌ライター | 編集術 |
1 | イントロダクション | イントロダクション |
2 | 読者と世界観とキャラクターと物語 | 表紙制作① |
3 | Webによる情報収集① | 表紙制作② |
4 | Webによる情報収集② | 表紙制作演習 |
5 | 校外実習による情報収集 | 校外実習による情報収集 |
6 | フォローアップ調査 | フォローアップ調査 |
7 | 三幕構成とライトノベル分析① | ポップ制作 |
8 | 三幕構成とライトノベル分析② | フォントと配色 |
9 | メインルート設定(S→M) | カラーユニバーサルデザイン |
10 | メインルート設定(キャラクター) | チラシ制作演習 |
11 | メインルート設定(M→L) | 著作権入門 |
12 | メインルートの確定と提出 | チラシ制作と提出 |
これらの授業を通してやりたかったことは、「学生が神話・民話・伝承をはじめとした、地域社会のコンテキストを用いてオリジナルのゲームブックを作り、自ら発信できるようになる」ことです。そのために今期は校外実習による調査・取材の枠をとりました。具体的には東京都中野区の鎧神社を中心に、日本武命、大己貴命、少彦名命、平将門公の足跡について調べることを計画していました。また、優れたゲームブックを作るためには、ゲームデザイン(ツリー構造のデザイン)と物語制作の両方の視点が必要になるため、後期に予定しているノベルゲーム演習の導入部としても最適のように思われました。
授業で用いた教材と教科書は以下です。特にゲームブック『凡百聖女の英雄譚』は1本道王道ストーリーの表題作と、ループものの『痕百画聖の奇蹟』の二作がセットになっており、ツリー構造の分析に向いています。昨年度、演習用に10冊購入させていただきました。あと、『ソードアート・オンライン 第1巻』が三幕構成のお手本的な内容でしたので、こちらも教科書指定しました。
- ノベルゲーム演習:ティラノビルダー、Twine、ゲームブック『凡百聖女の英雄譚』
- Web/雑誌ライター:書籍『ソードアート・オンライン 第1巻』(プロット分析のため)
- 編集術:LibreOffice
また、授業づくりでは主に下記の書籍・資料などを参考にしました。
- シナリオライティングの黄金則(金子満, 長尾康子/ボーンデジタル)
- 超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方(沼田やすひろ/講談社)
- おもしろいゲームシナリオの作り方(Josiash Lebowitz, Chris Klug/オライリージャパン )
- フォントのふしぎ(小林章/美術出版社)
ただ、うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともありました。最大の誤算はコロナ禍で、緊急事態宣言中に校外実習を行うのははばかられました。そのため、校外実習とフォローアップ調査はそれぞれ、第9回と第10回に移動させています。そのため、 「地域社会のコンテキストの発信」という要素が大きく減退し、「昔話の現代風リメイク」が実習テーマになってしまいました。ただ、いきなり神話・民話・伝承をテーマにするのは、今から考えれば難しかったかもしれません。1年生は昔話のリメイク、2年生で地域社会のコンテキストの発信と、段階を踏んでも良いのかなと思います。
なお、授業で使用したスライドは一部修正のうえでこちらにまとめましたので、興味のある方はダウンロードいただければ幸いです。