議論型学習のやり方を取り入れて、じわじわと進めていったら、なんと折り返し地点にまで到達してしまった本講義。前期は14回しかないので、今日で前半終了となります。また本校では前期11回目と12回目の間に夏休みが挟まるため、実はあと5回で一区切りつけなければいけないんですね。そこで、ちょっとお尻に火がついた感じになりまして、今日から巻きを入れることにしました。90分授業のうち30分が前回のふり返り、30分が本論、そして残り30分がワークショップという形です。
はじめに前回のふり返りでは、上手と下手の概念について抑えておくことにしました。諸説ありますが、上手と下手は人間の心臓の位置に起因するとされます。人間の心臓は体の左側にあるので、左から来るものに対して反射的に身構えてしまう。だから画面の右側は主人公、左側には敵が配置されるというわけです。その上で授業のポイントは、そんなふうに「人間は理屈ではなく、本能的・反射的にゆさぶられる要因がある」ことを知ってもらうこと。おもしろいゲームを作る上で、こうした人間の特性を知ることが重要になるわけです。
この授業でも何度も繰り返していますが、面白さは主観的なもので、だからこそ「このゲームは自分にとっておもしろい・つまらない」という議論が成立します。ドラクエとFFでどっちが好きでも、それはその人にとって正しいのです。その一方で作り手としては、できるだけ多くの人に楽しんでもらえるゲームを作ることが求められます。その際にドラクエみたいなゲーム、FFみたいなゲームを作るのでは、すでにその時点でお客さんをふるいにかけてしまいます。それよりもドラクエやFFのおもしろさがどこから生み出されるのかを分析することが重要です。
そこで本講義ではじゃんけん遊びの改良版をプレイしながら、「かけひきによる面白さ」が「じゃんけん」という遊びから生み出されること。こんな風に「面白さ」は「特定の仕組み」によって固定され、一般的にその仕組みは「遊び」と呼ばれること。そして複数の「遊び」が束ねられて、ゲームとしてパッケージングされていること・・・などを解説しました。ちなみにゲームデザイン用語では、この「特定のおもしろさを生み出すルールの構造体」のことを一般的に「(ゲーム)メカニクス」と呼びます(諸説あります)。この呼び方にも慣れてもらうことにしました。
とまあ、ここまで説明した上で、グループに分かれて自分たちの好きなゲームを分析してもらい、「どのようなメカニクスが含まれているのか」「そのメカニクスによって、具体的にどのような面白さが生み出されるのか」「そのメカニクスの背景となっている遊びは何か」について、まとめてもらうことにしました。結果はスライド資料に添付してあるとおりで、おおむねみんな理解できたのではないでしょうか。こんなふうに「ゲームの面白さと日常生活は、遊び(メカニクス)でつながっていること」を理解してもらえたら、成功だったかなと思います。
授業の後半では好例のUnity演習で、いよいよ操作という概念が加わりました。簡単なピンボール風の構造を作って、ボールをバーで跳ね返せるようにするというものです。ところが、ここでほとんどの学生が「ボールがうまくバーで跳ね返せない」というトラブルに見舞われました。実はこれ、自分も前日に自宅で作業をしながら、同じようなトラブルを経験していたのですね。後日精査したところ、Unity上での左右と、見かけの左右が狂っていると、こうしたトラブルが起きる可能性が高いことがわかりました。次の良いネタになったといえそうです。