MDAフレームワークを用いたゲームデザインワークショップ


普段、自分は601教室で授業を行っています。この教室は学生の人数分+αのゲーミングPCが机の上に鎮座しており、Unity演習には良いんですが、グループワークにはちょっと不向きなんですね。そこで今回から地下1Fのカフェスペースを併用させていただくことにしました。こんな風にトランプでチーム分けをして、MDAフレームワークを用いたゲームの分析ワークショップに挑戦してもらった次第です。普段あまり話さない学生同士が交流するきっかけになったり、意外な側面が発見できたりするので、今後もどんどん行っていく予定です。

というわけで前回は「遊びと面白さとメカニクスとゲーム」というテーマで、各々の関係性について解説しました。今回はそこから一歩進んで、テーマとメカニクスと面白さの関係性について深掘りしつつ、オリジナルのゲーム企画を考えてもらうことにしました。ツールとして使用するのは、海外のゲームデザイン教育ではメジャーなものの、日本ではプロでもマイナーな存在に留まっているMDAフレームワークです。ゲームをメカニクスとダイナミクスとアセスティクスに分けて分析するというものです。

MDAフレームワークはGDCの教育サミットなどで発表され、日本でもDiGRA JAPANの活動などを通して、2013年ごろに紹介されました。ただ、ちょっと用語や概念がわかりにくいんですよね。メカニクス・ダイナミクスはまだしも、アセスティクスって舌を噛みそうな名前じゃないですか。あと、あわせて紹介された「シッシーゲーム」も、個人的によくわからなかったw それが新たに「テーマ」という概念が加えられたことと、ダイナミクスとアセスティクスが共にプレイヤー視点でまとめられたことで、スッキリと見通しの良いものになりました。

具体的にいうと、「テーマとメカニクスとプレイヤーの行動は互いに関係がある」、そして「特定のメカニクスによって、特定のプレイヤーの行動が自然と導かれ、特定の感情(おもしろさ)が生み出されていく」。つまりMDAではなく、フレームワークがTMDAに拡張されているわけですね。こう考えることで、非常にスッキリしたモノになりました。MDAフレームワークについて勉強してみたけど、今ひとつピンとこない、わかりにくい。そんな風に感じていた人にとって、非常に役立つ資料ではないでしょうか。事実、自分がそうでしたから。

ちなみに書き忘れましたが、このワークショップの資料は自分が考えたものではなくて、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬洋平氏が作成し、学生向けの講演などで使用されている「初心者のためのゲームデザインワークショップ」をベースとしています。その上で自分の授業にあうように、ちょっと細部を書き替えました。こんな風に、他人が作った学習資料を並べてカリキュラムを作ることを、他人のフンドシで相撲を取る、もとい「編集」と呼びますw いわば雑誌の台割りを作るようなもので、編集経験があって良かったなあと今になって思います。

ぶっちゃけ、去年1年間やった授業も、その大半が「どっかから引っ張ってきた」ものなんですね。ただし、それらを特定の意図を持って並べたり、隙間を埋めたりするのはオリジナル。これぞ編集といわずに何を編集というのか、いや言わん、みたいな。というわけで、自分がブログで公開している講義資料も、出展を明記していただければ、ご自由に引用・加工・活用していただいてかまいません(事前承認なども不要です)。それによって、少しでもゲーム教育のボトムアップにつながれば幸いです。

また、この授業ではEMSフレームワークも取り入れました。EMSフレームワークは神奈川工科大学の中村隆之氏が考案されたもので、ゲームの構造を一言で言い表すことができる、非常に優れたものです。そこで今回のグループワークでは、自分たちが考えたオリジナルのゲームアイディアを、まずEMSフレームワークで整理し、その上でMDAフレームワークに沿って深掘りするという形を採用しています。実際、ゲームの内容を一言で説明するって、プロでも難しいんですよ。それが簡単にできるので、プレゼン前などに活用されると良いのではないかと思います。

というわけで今回のグループワークは90分間で行いましたが、わりと学生の理解が早く、最後の発表でも力作が並びました。ただ、ちょっとみんなしゃべりが早すぎたり、説明が不足気味だったりしたかな・・・。まあ、この辺は慣れですから、もっと機会を増やしていけると良いですね。また、ホントは鉛筆ではなくマジックで書かせたり、パワポで資料を作らせたり、最後にみんなで投票して1番を決めたりできると良かったんですが、準備不足&時間不足でした。この辺は次回の課題ですね。

ちなみに次回も今回の内容を引っ張って、対象ユーザー層と、ユーザーの心理状況の変化を踏まえたメカニクスの深掘りをテーマに、グループワークを進めていく予定です。ネタ本は「プログラミングのはじめかた」(あすなこうじ著)です。この授業の目的はゲームライターのノウハウを学ぶことですが、企業応募用の企画書制作やゲーム開発演習などに役立ててもらえば良いなあと思っています。