ゲームライターコミュニティ#27「東京ゲームショウ2018取材攻略法」レポート


ゲームライターコミュニティでは2018年7月22日に第27回勉強会「東京ゲームショウ2018取材攻略法」をヒューマンアカデミー秋葉原校で開催しました。当日は同校から希望する学生も参加し、賑やかな会となりました。

取材目的をハッキリさせることが大事

はじめに代表の小野憲史氏から、取材概要の話がありました。小野氏ははじめに「東京ゲームショウにはさまざまな切り口があり、取材目的は個々人によって異なる」と説明。そのため、目的にあわせた取材準備を進める必要があるとしました。

ちなみに小野氏の場合は業界コラムのネタ探しと基調講演のレポート記事執筆が中心で、速報性が問われないため、会場全体をざっくりと見て回ることが多いとのこと。収益性は低いものの、ここで得られた知見や情報が年間を通して、さまざまな記事執筆に役立てられていると説明されました。

また、フリーランスのライターにとって最も重要になるのが、プレスパスの取り方です。基本は各媒体の編集部に依頼して、業務委託を受けているライターとして登録してもらうことになります。そのため編集部につてのない新人ライターにとっては敷居が高くなります。一方で東京ゲームショウの取材は編集部にとっても、数多くのライターを必要とするため、新人ライターの登竜門にもなりやすいとのこと。積極的に編集部に売り込んでいく姿勢が問われるとしました。

レポート記事の書き方では、最初に全体の分量と記事内容のイメージを想定することが重要で、全体で1600文字なら一段落を200文字として、8段落前後で全体構成を想定しておき、その内容にそって取材内容を取捨選択すると良いとのこと。その上で「考えてから書く」姿勢が重要だとしました。「慣れない内は考えないで書くので、ついダラダラと書いてしまいがちです。全体テーマを冒頭で示して、それに肉付けするように書くと、要点が絞られて、わかりやすい記事になります」

具体的には「最初に仮タイトルを決める」「次にリードを書く」「Wordに写真を貼り付けながら、全体構成を決める」「写真の間を埋めるように文章を書く」という手順を示しました。また写真を撮影する場合は、登壇者のアップと会場の全体図を抑えること。またスライド類はPhotoshopやGIMPなどで台形補正をすると、見やすくなるとしました。

時には捨てる勇気を持つ

続いて登壇した鴫原盛之氏は「TGSをブッ倒せ!取材攻略術指南」と題して、東京ゲームショウ取材の中心ともいえるブース取材のコツについて説明しました。鴫原氏は「取材記事のクオリティは事前の段取りで決まる」と強調。入念な事前準備と、各ブースの宣伝広報とのパイプ作り、そして時には「捨てる勇気を持て」とコメントしました。

文字通り分刻みでの取材と執筆が要求される東京ゲームショウ。多くの場合、読者対象は一般公開日の来場者となります。そのためライターには、業務日の二日間で取材した内容を、できるだけその日のうちに記事化し、公開する姿勢が求められます。そのためには取材をいかに効率化し、漏れのない記事がかけるかがポイント。そこで必要になるのが事前準備というわけです。

取材当日は担当ブースのプレス受付で、ブースごとの宣伝広報担当に挨拶し、サプライズ発表などの有無を確認します。「特に大手では、こうした発表を盛り込むことが多いので、確認が必要です」(鴫原氏)。イベント取材時は遅くとも開始時間の15分前に到着し、余裕を持って取材にのぞむこと。そのためには編集部から割り当てられる取材スケジュールをもとに、会場のブース配置などを確認しておくことが必要です。また、事前にダミー原稿を作成しておくと、執筆の効率化が図れます。

また、メーカーによっては記事の事前チェックが必要な場合があります。特に厳しいのがタレントや声優などのステージイベント取材で、掲載写真の事前確認が求められることが一般的です。一方で記事をチェックする側としても、短時間で大量の確認が必要になるため、タイミングによっては内容確認に時間がかかってしまい、記事掲載のタイミングを逸してしまうことも。そのため、状況によっては取材自体を取りやめて、空いた時間を他の原稿執筆に充てる勇気も必要になるといいます。

このほか、暑さ対策も重要なテーマになるとのこと。飲料水は必ず持ち歩くこと。2日間以上、現地で終日取材する場合は、事前にカーボーロディング(=スポーツなどの場面で、運動エネルギーとなるグリコーゲンを通常より多く体に貯蔵することを目的とした運動量の調節や、栄養摂取法)をすることも有効だといいます。実際に鴫原氏は東京ゲームショウの取材だけで、数キロも体重が減少してしまうとのこと。「では、みんな地獄で会おう! 健闘を祈る!」と締めくくられました。

eスポーツ取材は選手が主役

最後に登壇した岡安学氏は、近年急速に取材機会が増えているeスポーツに焦点を当て、「eスポーツ取材の為に必要なこと」と題して講演しました。岡安氏は「eスポーツイベントで重要なことは、ゲームではなくて選手にスポットを当てること。ゲームではなく、スポーツ取材だと思って臨むことが必要」だとしました。

「取材する大会のゲームタイトルを調べる」「出場チームや選手の経歴を調べる」「大会レギュレーションをチェックする」・・・こうした事前準備はeスポーツイベントにおいても重要です。特に大会の動画配信とアーカイブの有無をチェックすることが重要で、仮にアーカイブを後からチェックできれば、試合内容の細かいメモや写真撮影などは不要になります。「東京ゲームショウで開催されるeスポーツイベントでも、動画アーカイブを活用した記事化が可能だと思いますので、全体の雰囲気や流れをチェックすることをお勧めします」(岡安氏)

その一方で、eスポーツイベントならではのポイントとして、フラッシュ撮影の禁止が挙げられました。プレイヤーの目にフラッシュの光が飛び込んだり、画面に反射したりして、試合の妨げになるからです。一般的に会場は薄暗いため、選手の写真を撮影するためには、高感度に強く、高速シャッターが切れるデジカメを用意することが必用になります。

このほか、プレイヤーネームが特殊な場合が多いため、事前に確認することが重要だとのこと。また、自分が詳しくないタイトルについては、試合経過は無視して結果のみに言及するなどの割り切りが求められるとしました。最後に媒体特性によっては、賞金額や来場者数などのパワーワードを盛り込み、eスポーツに興味がない読者にも目を惹かせるような工夫が求められると補足されました。

メディアを取り巻く現状が反映された質疑応答

セミナー後半では運営スタッフの柿崎俊道氏や、来場者から德岡マサトシ氏も飛び入り参加し、会場からの質問に答えつつ、それぞれのノウハウを共有しました。「一番の失敗は?」という質問に対して、徳岡氏と岡安氏は「登壇者の名前を間違えたこと」と回答。メモだけではなく、名前の写真を撮影しておくことが重要だとしました。

また、柿崎氏は「10年以上前、インディゲームを集めてブース出展したことがあった。モトローラーなどの大手マネージャーが訪れたが、権利を集約していなかったのでビジネスに繋がらなかった」と回答。出展者にしろ、取材者にしろ、目的意識を持って会場に臨む姿勢が求められると強調しました。

「ライターはどれくらいの速さで記事を書くべきか」という質問もありました。これには「当日の取材記事は当日納品が原則」とする回答が多く聞かれました。その一方で「イベントを取材しながらリアルタイムで記事を書くのが理想」「ストリーミング配信が行われている現状で、速度だけを追いかけても意味がない」という正反対の意見もあり、現状を良く反映した内容となりました。

ブースの宣伝広報とのパイプ作りについても議論が交わされました。鴫原氏は「宣伝広報側も自分たちの情報をメディアに露出させたがっている。彼らと良い関係を築くと、タレントや声優の写真確認でサポートが受けられる」と指摘。岡安氏も「デジカメの液晶画面で直接確認してもらうと早い。それができるだけの関係作りを普段からしておくことが大事」と語りました。

このほか、過去数年で急増しているのが海外インディゲーム勢の取材方法についても質問がありました。徳岡氏は「英語での取材が必須」としつつも、先方も情報を露出させたがっているので、かなりわかりやすい英語で話してくれるとコメント。インディゲームのブース取材は英語での取材の中でも、かなり敷居が低いものの一つなので、ぜひ臆することなく挑戦していって欲しいとエールを送りました。