ペルソナと世界観とMDAフレームワーク


第6回から第8回目まできて、気がつけば前期も折り返し地点を過ぎてしまった今年度の講義です。特にクールジャパンでは第10回目と11回目の間に夏休みが入るため、あと2回で一区切りをつける必要があります。さらに第5回目と第6回目の間に学校行事の球技大会があり、一週授業がお休みとなります。つまり……

  • オリエンテーション(4月~GW)
  • 前半授業(1~5回)
  • 球技大会
  • 後半授業(6~10回)
  • 夏休み
  • まとめ(11~12回)

という3部構成をとっているわけで、これはこれでなかなか良くできたカリキュラムだと、あらためて実感しているところです。

さてさて、授業の前半では「ゲームとは何か」という概念論から、EMSフレームワークでゲームのアイディアを考えるところまで進みましたので、後半ではより本格的なゲームデザイン論について入っていきます(もっとも、この授業の目的は「ゲームを企画する」ことではなく、「ゲームを分析する」ことにあります。まあ、両者は表裏一体なのですが……。各回のテーマは下記の通りです。

  • 第6回 6月21日 ペルソナ【ワークシート
  • 第7回 6月28日 世界観 【ワークシート
  • 第8回 7月5日 MDAフレームワーク 【ワークシート】 【スライド
  • 第9回 7月12日 ゲームプレイのPDCサイクル(予定)
  • 第10回 7月19日 ストレスループ(予定)

ここでのポイントはペルソナと世界観(テーマ)とメカニクスとダイナミクスとエステティクスで、それぞれ関係性があるという点です。同じ「アイテムを投げて制限時間内に的に当てる回数を競う」ゲームでも、野球が好きな小学生とサッカーが好きな中学生と歴史好きな高校生とでは、適した世界観が異なるでしょう。同じように世界観(テーマ)が決まれば、ゲーム内でのプレイヤーの行動(ダイナミクス)が変わるでしょうし、それによってメカニクスやエステティクスも変わっていきます。

そのうえでゲームを遊びながら、これらの関係性が一気通貫で読み取れることが、おもしろいゲームの特徴である……そんなふうに感じています。授業でもグループごとにゲームを選んで、上記の関係性を議論した後に、紙に書いて発表してもらいました。

その上で改めて感じるのは、制作者視点とプレイヤー視点でのゲームの捉え方の違いです。制作者は(特に学生は)ゲームを紹介するとき、メカニクス視点で捉えがちです。しかし、これだと聞いた側が一度脳内シミュレーションをして、そのメカニクスによってどんな行動がとれるのか、翻案しなければいけません。

これに対してプレイヤー側はゲームについて友達に話すとき「あんなことができる、こんなことができる」と、ゲーム内での振る舞いについて語ることが多いように感じます。こっちの方が楽しさがダイレクトに想像できますよね。あるいは、もっと端的に「とにかく怖い」など、エステティクス視点で話すことが多いかもしれないですね(ちなみにダイナミクス視点で書かれたゲームの紹介記事の例はこちら。勉強になります)

でもって、ここまで考えてはたと思いついたのが、「そうか、プレイヤーはメカニクスではなく、ダイナミクスによってエステティクスを得るのだ……」という、しごく当たり前の話です。んでもってダイナミクスを誘発するのがメカニクスですから、本質的には同じような意味あいでも、メカニクスが変わればダイナミクスが変わって、エステティクスが変わるということ。何が言いたいかというと、勉強会で「海外のビジュアルノベルゲームはメカニクス重視」という話を聞き、ずっとその意味が引っかかっていたんですよ……

これに対して近年、増加傾向にあるのが選択肢の代わりに、ストーリーに即したゲームメカニクスを組み込む「ギミック系」ビジュアルノベルゲームです。前述の「逆転裁判」シリーズが好例で、他に「ダンガンロンパ」「シュタインズゲート」シリーズなど。同社のタイトルで言えば、バーテンダーとなってカクテルを調合する「VA-11 Hall-A」が相当します。客の好みに応じたカクテルを作るか否かが選択肢となり、ストーリーが分岐していくというわけです。

https://www.igda.jp/?p=8832

上はビジュアルノベルの選択肢の例、下はバーテンダーになってカクテルを作る「VA-11 Hal-A」です。どっちもやっていることは「選択肢を選ぶ」ことなんですが、 「VA-11 Hal-A」 は世界観にあったメカニクスが組み込まれ、それが選択肢に相当しています。繰り返しますが、やっていることは「選択肢を選ぶと、それにあわせてストーリーが分岐していく」ということ。でも、プレイヤーが得られる感情はちょっぴり違います。そして行動と感情をあわせて体験(=ユーザーエクスペリエンス)と呼ぶのだろうな、なんてことを感じさせてくれます。

ただ、メカニクスを複雑にしすぎると、今度は「ゲームの遊び方が理解できない問題」「クリアできない問題」が出てきます。どの程度の複雑さが適切かは対象ユーザー、すなわちペルソナによるわけで、その意味で「選択肢を選ぶだけ」というメカニクスは、ペルソナを限定しない長所があると言えます。ただ、メカニクスが誘発するダイナミクスと、それによって得られるエステティクスの差別化は、当たり前ですが難しくなります。その結果、ゲームの差別化がグラフィックとシナリオでしかできなくなる……。なんか当たり前のことを、回りくどく説明しているだけのような気もしてきましたが、そんなことを感じた次第です。