非キュレーションメディアはなぜキュレーションメディアに勝てなかったのか


皆様ご存知の通り、ここのところWELQに端を発するキュレーションメディアの問題がネット上を賑わせています。
DeNAの全キュレーションメディアが事実上停止し、ここ数日はNAVERまとめへの無断転載に関する問題が表面化するなど、類似する仕組みの多くのサイトに影響が及んでいます。

問題の経緯や詳細などはネット上に多数ありますのでここでは説明しません。
この記事では、キュレーションメディアではないサイトの運営者から見た「転載」「キュレーション」の特に「盗用」周辺について思い付くことを適当に書いてみたいと思います。(不正確な情報の流布問題はこの記事では除外)

ゲームライターコミュニティーの公式見解ではありません。加藤個人の考えです。

キュレーション以前の「転載」

私がサイトの運営を始めたのは2013年の1月からです。約4年前ですが、当時からネット上の記事や写真のパクリ問題はありました。複数のサイトやブログを運営していましたので、色々なところに記事や写真が引用、転載、或いは盗用されていました。

ほとんどは個人の方が自分のブログに画像を転載する、というような使われ方でした。
当時キュレーションメディアを含む大きなサイトに転載されなかったのは私のサイトが弱かったということもあると思いますが、キュレーションという言葉が一般的でなかったことも一因かと思います。

個人の方が自分のブログに使う分には、まるごとコピーしたり、文脈を不適切に変えていたりしない限りは、こちらとしてはとやかく言うつもりはありませんでしたし、今でもその方針は変えていません。

同じジャンルに興味があって、それを発信する際に私の手元のサイトのコンテンツを上手に利用してもらう分には全く構わないのです。
引用は引用部分とオリジナル部分との主従関係に注意する必要などがありますが、個人の方についてはあまり気にしていません。
固いこと言わずにうまく盛り上げていきたいですよね、本来は。

徐々に悪影響も出てくる

しかし徐々に牧歌的な雰囲気が怪しくなってきます。
「キュレーション」という言葉が世に出だした頃、2014年くらいになると、「転載」されることでの問題が発生してきました。

1つは検索順位の問題でした。
私のサイトはSEOという、検索エンジンに対するサイトの構造の最適化技術によって、検索結果から多くのアクセスを集めていました。
しかし明らかに転載の塊みたいな中身の無い転載記事に、検索順位で負けるケースが出てきました。

転載記事には申し訳程度に転載元のURLが置いてありましたが、そこから遷移して転載元のサイトを訪れるユーザーはほとんどおらず、サイトへのアクセス数が収益に直結するサイト運営者にとっては大きな脅威になりました。

サイト運営者の中にはキュレーションメディアを悪用し、キュレーションメディアに自分のサイトへのリンク集を投稿する人も出てきました。
この行為は非常に問題で、検索結果上位に無意味な目次ページが並び、サイト本体のコンテンツの質によらず「キュレーションメディアに先に目次記事を作れば勝ち」というような妙な雰囲気を生みました。
先に述べたようにキュレーションメディアから転載元サイトに遷移するユーザーはほとんどいませんので、この行為は結局は自分のサイトへの流入を減らす行為でもあり、一部のサイト運営者の自爆的な振る舞いは甚だ問題でした。

また別の問題として「画像の直リンク」がありました。
大手キュレーションメディアのには画像の「転載」は直リンク、という仕様のところもありました。
大きなアクセスを持つキュレーションメディアに画像が直リンクされてしまうと、こちらのサイトのサーバーに大きな負荷を与える懸念が発生します。
これには特定のサイトからのリンクの拒否設定や、画像ファイル名の一斉変換などの対策を行いました。

ライターさんのモチベーションに影響が出ることも困った問題の1つでした。
ライターさんの中には記事が公開された後、自分の記事がどれくらいの検索順位にいるかを検索して確かめる方がいますが、そのようなライターさんは検索結果をもとに自分の記事が他のサイトにパクられていると気付くことがありました。
キュレーションメディアは個人のブログと異なり、比較的検索順位が高いため、発覚するケースも増えててきました。

苦労して記事を書いたライターさんにとってみれば大変に不快な話で、運営者としてはサイトを守るという意味以外にもライターさんの仕事を尊重する意味でも削除申請を行い、場合によっては検索エンジンに通報して検索結果から除外してもらうように依頼していました。

ここ最近はキュレーションの悪影響は減少していた

上記の様な対策の結果か2016年に入ってからは、私としてはサイト運営上キュレーションメディアの悪影響はほとんど感じていませんでした。
サイトの規模やジャンルによっても影響は異なりますので一概には言えませんが、私の手元のサイトの場合はそのような状況でした。
ですので、WELQやMERY、NAVERの問題の表面化には少し驚きました。

今冷静に考えると、特に医療分野においては問題が発生する余地が大いにあったことが理解できます。

以前からあった「盗用」問題と今なおあるキュレーション外の「盗用」

ここ数年の内にコンテンツの盗用が社会問題化したことは何度かありました。

※参考:2015年5月の無断転載問題に関する記事2つ

バイラル・キュレーションメディアの勝手な無断転載はどうして止まらないのか? – 週刊アスキー

パクリメディア Spotlightのライターが盗用した先のブロガーを脅している! – 鈴木です。別館

ゲームライターコミュニティーでも「まとめブログ」系のコンテンツの転載(盗用)問題をテーマにした勉強会を実施したことがあります。

ゲームライターコミュニティ #10 | Peatix

現在問題になっているキュレーションメディアは「盗用」を助長し得る仕組みを内包していることから問題がありますが、それは今後健全化することを期待するとして、しかしキュレーションメディア以外の一見普通のウェブメディアにも盗用は浸透しています。

ネット上の記事や写真は「盗用」が極めてやりやすく、そして手間ひまをかけて一次情報を発信するよりも発信された一次情報を適当にパクって繋ぎ合わせてそれらしいコンテンツにする方が負荷が圧倒的に低く、ネットワーク広告で収益化する場合はパクった方が収益性が高くなる、という事情が「転載」=「ほぼ盗用」を行う側の事情だと思います。

私の周囲にも残念ながらコンテンツの「盗用」を「引用」と言い張りウェブメディアを運営している方がいますが、彼らに「盗用」の危険性を解き理解させたとしてもなかなか盗用はやめられません。
それは過去の記事を全て消して新たに作り直す必要があり、かつ、これからは今までのように楽をせず、苦労して地道にサイトを育てる努力を必要とするからです。
目の前にある収益=現金を手放せという提案には、人はなかなか頷きません。

キュレーション・まとめブログ、その他の「盗用」の可能性が高いサイトへの対応

ゲームライターコミュニティ第10回勉強会では、プロライターさんからの発信でこの問題に対する討論が行われました。

印象的だったのは、ライターさん側は盗用に対して大きな怒りを持っており、そしてサイト側が意外なほどにこの問題に取り組んでいないということでした。

ライターさんからは
「盗用を見つけて報告しても手間を理由に編集部が対応してくれない」
という嘆きが聞かれ、サイト運営側からは
「著作権についての申し立てをするのは負荷が高い」
「相手が大きなサイトであれば顧問弁護士が付いている可能性もあり、勝てないのではないか」
というような意見が聞かれました。

コンテンツ盗用への対応は高負荷だというのは一見正しいように思われますが、実はそうではありません。
記事の削除要求はまずメールで相手に通知すれば良いのであって、私は実際に何度か通知したことが有りますが、ほとんどは即謝罪と削除完了のメールが届き、即でないものも何度かのメールのやり取りをしたのみで、負荷らしい負荷が発生したことはありません。

 相手に弁護士がついていればなおさら楽で、明らかにこちらが正しいのですから、むしろ妙な個人よりも速やかに記事は削除されました。
本来はサイトの利益を守りライターさんの尊厳を守るべきサイトの編集側の多くが、簡単にできることをやっていない実情が、キュレーションメディアの暴走を生んだ一因になっていたのではないかと思います。

著作権保護に対する社会的な仕組みの整備は現状に則して必要です。
しかし現状でもサイト運営者は「それは盗用であり認めない」ときちんと主張していくべきでしょう。それほど大変なことではありません。まずはメールを1本送るのです。メール1本送る手間が惜しいのであれば、それは守るべきコンテンツとは思っていないということです。

※12月15日23:30追記
相手によってはややこしい手続きを求められるケースもあるようです。一部のキュレーションメディアに対して、まさにこの点が問題視されれています。
全件すんなりと片が付いた私のケースはラッキーということかもしれませんが、しかしメールを1本送る手間はやはり惜しむべきでは無いと思います。

「盗用サイトのライターは楽して儲けていてずるい」「彼らに対抗するサイトを作るべきだ」というのは誤り

ライターさんとこの問題について話すと「あのサイトのライターは盗用で儲けていてずるい」というような話がよく出ます。
PVがこれくらいだから広告収益がこれくらいだろう、自分の収入の**倍!みたいな計算をする方もいますが、これは大体間違いです。

私のようなサイトの運営者のところには色々なウェブ系の広告業者が連絡をしてきますが、その中には「バイラル」「キュレーション」専門の業者や担当者がいます。
彼らに聞いた限りでは、いわゆる盗用サイトの広告単価(1クリックあたりの収益)は通常のサイトに比べかなり低いものです。
パクリサイトは普通にやっても儲かりません。馬鹿馬鹿しいことにそれなりに研究と努力が必要です。

専門の広告業者が

「ミスタップ命ですね〜単価の低下をクリック率で補う仕組みです!」

と言っていたのが印象に残っています。
これって単に広告出稿側に損害与えていないか?と思いますが、広告出稿側もどのようなメディアに掲載されるのかを最低限程度には精査して、よろしくない広告事業者は切っていくとかしていただけると、界隈はキレイになると思います。
(著作権のフォローはしていません!と言い切っていたのも印象的。一緒に万引きしましょう!と言われている気分だった。)

大手のキュレーションメディアの中には収益性の高いビジネスモデルを築いているところもあります。しかしそこにいるライターさんは無料で寄稿していたり、極めて低報酬で記事を量産しているというのが実態です。
決してプロライターさんが羨むような状況にはありませんので、そこに悶々とする必要は一切ありません。
事業としても危険ですよね。実際今ビジネスモデルの継続性は崩壊していますし。全然羨ましくありませんよね。

「盗用サイトを駆逐するために何か対抗措置を講じたい」というような話もよく出ます。気持ちは分かります。
よく出るアイデアとして
「盗用サイトを超える規模でユーザー投稿型のサイトを作る」とか、
「キュレーション的な砕けた雰囲気のサイトを志のある大手がやってくれれば」とかいうようなものがありますが、果たしてそれってどうなんでしょうか。
それも問題のサイトと同じようにウェブを汚しませんか?

そんなことを考えるよりも、ウェブ編集者とライターは、とにかくメディアの価値を上げることに力を注ぐべきではないかと思います。
「パクったところでこれは勝てん」と思わせるくらいのものを作るのが最上です。圧倒的に価値が高ければSNSも検索エンジンも勝手に付いて来るでしょう。

王道こそ最強で、王道こそ全てなんです。

キュレーションそのものが悪ではない

最初にキュレーションメディアに触れた時、これは凄いものだ、と思いました。
当時は東日本大震災の被害がまだあちこちに残り、防災に関する情報を人々が求めていました。
キュレーションメディアには防災情報のまとめが多数掲載されており、その中の多くは様々なサイトから有用な情報を集め整理し、それに注意事項などを添えて公開されていました。

簡単に手早く役に立つ情報を生成できる仕組みに大層関心しました。

しかしご存じの通り、キュレーションメディアはその後「キュレーション」という言葉を隠れ蓑に転載と盗用とをごちゃまぜにしながら、簡便に情報を閲覧したいというユーザーのニーズを反映して、そう、まさにユーザーの支持を得て成長し、そして問題の表面化に至りました。

我々サイト運営者とライターが知らなければならないのは、キュレーションメディアはユーザーに支持されて成長したということです。
スマホが閲覧媒体の主体になった今、スマホユーザーに最適化した上質なコンテンツを我々が十分に発信できていたでしょうか。
旬の情報を、素早く色々な切り口から見てみたいというニーズに答えていたでしょうか。
SNSで目を引く釣りタイトルと、SEOに有利なしかしスマホでは読みにくい長文ばかりに気を使っていなかったでしょうか。
スマホという媒体へのユーザーの接触態度を真剣に深く考えてサイトの構成を考えていたでしょうか。

盗用は悪ですが、キュレーション自体は仕組みの一つです。
権利をしっかりと主張しつつ、

「盗用されたところで負けないから問題ない」
「盗用したところでメリットがない」

というくらいの状況を我々プロ側は目指すべきではないでしょうか。

※2016年12月15日23:30、誤字脱字の修正や表現の修正、一部追記などを行いました。