E-PL5はゲームライターの仕事に使えるか?


以前Facebookのグループページでもご報告しましたが、2014年8月に購入したオリンパス STYLUS 1というデジカメがどうにもこうにもトラブル続きで、2016年11月に何度目かのメーカー修理に出したところ「後継機のSTYLUS 1sも含めてディスコンなので、同時期に発売されたPEN Lite E-PL5ダブルズームキットと交換いたします」とアナウンスがあり、ドナドナされていきました。それから約2ヶ月が経過し、プライベートに仕事にと結構E-PL5を使ってきたので、このへんでゲームライター視点でのレビューをしてみます。

というのも、世の中にはさまざまなデジカメのレビュー記事がありますが、当たり前ながらゲームライター視点でのレビューって皆無なんですよね。というわけで自分が自分のために「仕事で使えるか」(まあ、使っているわけですがW)という視点で書いてみたいと思います。

E-PL5ダブルズームキット。これに外付けストロボ(後述)がつきます。

キットレンズの標準ズーム(14-42mm)をつけたところ。

液晶部分が可動式で撮影時の自由度が広がるのが良いところ。

我々の仕事の特殊性

仕事で20年以上カメラを(中途半端に)触ってきて、ようやく理解したことが二点あります。それは・・・

  • 晴天の屋外で撮れば、たいてい綺麗に写る
    →光量がたっぷりあるのが大切
  • 受光面(フィルムまたは映像素子の面積)が大きければ大きいほど綺麗に写る
    →フルサイズ>APS-C>フォーサーズ>>>>>コンデジ

ということです。はい、当たり前ですね。そして、ゲームライターが写真を撮影する時って、これらの条件と矛盾した場所であることがほとんどです。中でも多いのがインタビュー中や講演中のポートレート写真、そしてイベント時の会場写真やブース写真などでしょう。また講演のレポート取材を行う場合は、プロジェクターで投影される講演資料なども重要な被写体となります。

当然ながら、こういう場所でもフルサイズのデジタル一眼レフカメラに明るいレンズを装着して撮影すれば、普通に綺麗に撮れちゃうわけです。しかし、そんな大きいカメラを担いで会場を回っていたら、すぐに疲れちゃいますよね。ただでさえノートPCだ、スマホだ、資料だと荷物が多いので、できれば小型のデジカメを使いたいもの。というわけで、どれだけ小さいデジカメでガンバレルか・・・という点が大きな関心事になるわけです。

自分もそういった観点から2013年に当時、評判の良かったSTYLUS 1を購入して、そこそこ快適にパシャパシャと撮っていました。ただイベント会場やブース撮影などは問題なくても、やっぱり講演者の顔写真になると、けっこうノイジーで場合によっては(特に外付けストロボを忘れた時など)ガビガビになっちゃったりしたわけです。ただ、それを除けば優等生的なカメラだったように思います。なんたって3回も4回もメーカー修理に出してまで使い続けようと思ったくらいですからね・・・。

特に沈同型で焦点距離が28mm-300mm(35ミリ換算)かつF2.8オールのレンズと、高速で見やすい電子ビューファインダー、そして必要にして十分なAFの組み合わせは強力でした。レンズキャップがスクリュー式でレンズと一体化していて、紛失の恐れがなかったり、ワンタッチでMFとAFを切り替えられたり、ステップズームでマニュアルカメラのように使えたりと、細かいところも良くできてましたね・・・。

ただし前述の通り映像素子が1/1.7型と小さく、高感度耐性に劣るところが難点でした。また(個体差もあると思いますが)、ライブビューのヒンジ部分が都合3回壊れる、レンズキャップが壊れる、ホットシューが壊れる、電源スイッチが入らなくなるなど、とにかく故障に泣かされました。仕事で使う上では、ある程度の耐久性という点も重要な要素でして、優等生なんだけど身体はひ弱という感じでしたでしょうか・・・。

ただしE-PL5を仕事で使う上で、絶対に購入して欲しいアクセサリーが二つあります(これは現行機種のE-PL8でも同様です)。第一に電子ビューファインダーVF-2。もう一つは外付けフラッシュのFL-300Rです。理由は後述します。

VF-2とキットレンズ(14-42mm)の組み合わせ

FL-300Rとキットレンズ(14-42mm)の組み合わせ

サイズ

デジタル一眼レフと比べれば圧倒的に小さいE-PL5ですが・・・(写真左はニコンD5500+SB-800)

STYLUS 1と比べればその差は歴然(手元になかったので、こちらのブログから写真をお借りしました)。写真は電源スイッチを切ったところ。レンズがびよんと沈んで、ボディとほぼ一体になっています。鞄の中に入れる時に邪魔にならなくて便利です。もっともアイカップが外れやすくて、よくなくなったのが玉に瑕でしたが、まあアイカップがなくても撮影に支障はないので、そこは目をつぶっていました。

同じポーズでE-PL5を撮影したところ。電源を切ろうが何をしようがレンズがびよんと伸びています。当たり前ですよね。

キットレンズ(40-150mm)を装着したところ

そのかわりE-PL5はレンズを交換できます。そこがコンデジにはない、最大・最強のメリットです。もっとも標準ズームが14-42mm(35mm換算で28-82mm、F3.5-F5.6)、望遠ズームが40-150mm(同80-300mm、F4-F5.6)なので、近くを撮るには標準ズーム、遠くを撮るには望遠ズームと、けっこう頻繁にレンズを換装しなくちゃいけない。そのためにメモし忘れたり、レンズを落としたりするリスクが高まるわけです(落としてないけど)。

ただし、パワーズームではなく手動ズームなので、電源を切ってもズーム位置が変わらないのが良いところ。講演取材などでスライドを撮影する時に役に立ちます。もっともSTYLUS 1では完全にシャッター音をオフにできましたが、本機ではオフにできないため、会場によってはけっこう耳障りなことも・・・。また、写真はどちらもレンズが広角側になっていますが、望遠側にするとレンズがものすごくせり出します。STYLUS 1では、ズーム位置によってレンズのせり出しがほとんど変わらないので、よりコンパクトに感じられました。

フラッシュとEVFの微妙な関係

先ほど「E-PL5を使用するなら電子ビューファインダー(EVF)と外付けフラッシュを別途、購入して欲しいと書きました。というのもE-PL5には、どちらも本体に内蔵されていないからです。

先ほど「屋外で晴天なら、たいてい綺麗に写る」と書きましたが、E-PL5のようなデジカメにはアキレス腱があります。液晶パネルを見ながらフレーミングをする際、屋外だと液晶が反射して、良く見えないことがあるんですね。仕事でカメラを使うのに、これは致命傷です。一方、屋内でもずっと液晶パネルをつけっぱなしにしておくと、目に見えてバッテリーが減ります。そこでEVFを装着して、液晶パネルは撮影した写真を確認するくらいにおけば、両方の問題が解決するわけです。

そこでカメラのサイズにあわせてVF-2を購入しました。正直、STYLUS 1のEVFと比べると発色も解像度も追随性も見劣りします。もっとも、あるとないとでは大違いですし、我々の仕事だと、そこまで動きの速い被写体を撮影する機会はほとんどありませんから、そこは問題なく使っています。

FL-LM1を装着したところ。お洒落ですが光量不足は否めないところ。

これに対してフラッシュが非内臓なのは結構致命的です。もっとも、E-PL5には外付けの小型フラッシュ、FL-LM1が標準装備されていて、必要に応じてアクセサリーシューに装着して使用することになります。ただし光量が小さいのが玉に瑕。そして何よりバウンズ撮影ができず、光が被写体に直接向かうことになります。これで人物を撮影すると、髪の毛やおでこがテカテカになってしまいます。対人撮影ではフラッシュの光を直接相手に当てないこと。すごく重要です。

またアクセサリーシューの差し込み部の保護用に着脱可能なカバーがついているのですが、これが絶対になくしそうな代物です。そのため自分は前述の通り、より大型でバウンズ撮影もできるFL-300Rを使用しています。STYLUS 1にはフラッシュが本体に内蔵されていましたが、「光量不足」「バウンズ撮影不可」という理由で、当時から購入して使っていました。幸い同じオリンパスなので、E-PL5でも問題なく使えています。

絶対に紛失すること間違いなしの着脱式カバー

ただしFL-300Rには固有の問題がありまして・・・。単4電池2本を入れて使うんですが、電池カバーをロックする爪がもろくて、普通に使っているだけで、いつのまにか欠けちゃうんですよ。両方かけると蓋がロックできなくなります。しかもこれ、ちょこっと爪がかけただけなのに、メーカー修理に出すと数千円とられるんですよね・・・。外部カバーが聡取っ替えになるという理由で・・・。

本来ならもっと大型の、FL-600Rなどを買えという話なんだと思いますが、そうするとSTYLUS 1やE-PL5のカメラサイズと圧倒的に合わない・・・。というわけで昔からだましだまし使っているのが実情です。最悪、両方の爪が壊れても輪ゴムで止めれば使えるんですが、ちょっとかっこ悪いですからね・・・。

手前側の爪がかけてしまったところ

さらに、もっと悪いのがEVFとフラッシュがアクセサリーシューでバッティングしてしまうところ。そのため室内ではフラッシュをアクセサリーシューに装着し、液晶パネルを見ながら撮影することになります。講演レポートなどでは、はじめにフラッシュをさして講演者を撮影し、次にEVFにさしかえてスライドなどを撮影することに・・・けっこう忙しい・・・。

ところが、これはE-PL5に固有の問題なのか、それともSTYLUS 1でも同じだったのか、今となっては判断つかないのですが、何度かフラッシュを撮影して電池が消耗してくると、シャッターボタンを押しても瞬時にシャッターが降りてフラッシュが点灯しない、つまりリレーズタイムラグが長くなってしまう問題が発生します(フラッシュチャージの問題だと思いますが、STYLUS 1ではEVFを覗いて撮影する限り、こういった事態はありませんでした)。ポートレートは、ちょっとタイミングがずれただけで、とんでもない表情になってしまうので、うーん困ったなーというところです。

ケース

もう一つ、どうやってデジカメを持ち運びするかという点も課題になりました。STYLUS 1では何度も書くように鞄にポイッと入れておけば良かったんですが、E-PL5ではちょっとした取材だと、標準ズームと望遠ズームとEVFとフラッシュをセットで持ち運ぶ必要が出てきます。その一方で余計なカメラバッグなどもちたくない。だいたいミラーレス一眼って小さすぎて、普通のデジカメケースだとスカスカになっちゃうんですよね・・・。何か良いグッズはないかと調べたところ、オリンパスから良い商品が出ていました。

これぞミラーレス時代のデジカメバッグ

それがこの「中仕切り付汎用キルティングクッションケース CS-43」です。キルティングケースにちょっと厚めの中仕切りが入っているだけの代物ですが、ズームレンズ2本を入れて持ち運ぶのに最適。それどころか、フラッシュとEVFとカメラ本体まで入ってしまう懐の広さも持ち合わせています。これにカメラを入れてデイバッグの中に突っ込めば、思った以上にかさばらなくて良い感じです。

中仕切りがあってズームレンズが2本入ります。

必要なものが全部、入っちゃう懐の広さ

まとめ

というわけで思いがけずE-PL5をディスる結果になってしまいまして、正直「STYLUS 1をそのまま交換してくれれば良かった」と思わないでもないですが、じゃあ中古で買い足すかといわれれば、それもまた微妙なのも事実なんですよね・・・。中古で34800円(Amazon価格)という値段もさることながら、前述の通りとにかく故障に泣かされました(個体差だと思いますが)。仕事で使う道具なので、ある程度は頑丈であって欲しいんですよね・・・。それさえなければ、良いカメラなんですけどね・・・。

また、つらつらと述べた使い勝手の悪さを補ってあまりあるのが、STYLUS 1の1/1.7なんて豆サイズの映像素子が裸足で逃げ出すフォーサーズの高感度耐性。そして本稿ではまったく触れませんでしたが、映像素子の大きさから来るボケの美しさ。スナップ写真を中心とした普段使いのお散歩カメラでは、E-PL5の圧勝です。要するにそれだけゲームライター向けのデジカメというのが、ニッチなんだなと思わされます。STYLUS 1sの後継機が出そうにないのも、やはり評価は高かったものの売れなかったということなんでしょうか・・・。

ちなみに若手のゲームライターから「E-PL5(またはE-PL6~8)のダブルズームキットを購入しようと思うんですが・・・」と相談されたら、型落ちでいいのでニコンかキヤノンのデジタル一眼レフのエントリーモデルと大型フラッシュの同時購入を勧めます。やっぱりこの世界、大は小を兼ねるところがあるからです。まあ、そうして荷物が増えていく訳なんですけどね。でも若いからダイジョーブ! ミラーレスは二台目、三台目にしておくのが無難だと思います。


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