
こんにちは、稲垣翔太(イナガキ ショウタ)です。
東京国際工科専門職大学でゲーム開発を学び、将来はプランナーを目指しています。最近は映画や読書を通じて「面白さ」について日々考えています。
2025年7月18日から20日にかけて、京都で日本最大級のインディーゲームの祭典『BitSummit the 13th』が開催されました。
その一角では、学生のみでゲームを開発・展示する『BitSummit Game Jam 2025(BSGJ2025)』が行われました。開発は開催の約3か月前から、関東と関西でそれぞれ進行し、完成作品が会場で展示される仕組みです。
私はTeam E-08の一員として、このイベントの作品テーマ「妖妙」をもとに、体感型アクションゲーム『Witctech(ウィッチテック)』を制作・展示しました。本稿では、その制作過程とチームの歩みをご紹介します。

『Witctech』の概要
- タイトル:Witctech
- プレイ人数:1人
- コンセプト:動いて避けて楽しむ、バランスアクションゲーム
- システム:バランスWiiボードで箒に乗った見習い魔女を操作し、敵や障害物を避けながらゴールを目指す。
- テーマ「妖妙」の解釈:「子どもの頃に夢見た、非現実的なこと」と捉え、魔法使いになれる体験をゲーム化。
開発スタートと企画の変遷
開発初日の4月27日、東京会場(株式会社マイネット様オフィス)でキックオフが行われました。しかし、総勢8名のメンバーのうち初日に集まったのは4名。しかもプランナー2名は欠席という想定外の状況。2年生でチーム制作経験のない私が急遽中心となり、企画の舵取りを任されることになりました。メンターの助言を受けながら、必死に初日を乗り切りました。
当初は、杖を使って敵を倒すアクションゲームを考えていましたが、「目新しさ」や「通信の安定性」といった課題から方向転換。試行錯誤の末、バランスWiiボードを活用した回避特化の体感型ゲームへと大きく舵を切り、『Witctech』の骨格が固まりました。
『Witctech』は最初の企画段階から「避ける楽しさ」に重点を置いており、早期は障害物に近づいて避けるほど高得点になるスコアシステムを企画していました。

私は主にレベルデザインを担当しました。配置の流れを考えた結果、
- 緑エリア:操作の基礎を学ぶ
- 茶色エリア:直線で加速感を味わう
- 青エリア:次々と障害物が現れ、息つく間もなくゴールへ
という3段階構成を設計。最終的には当日のフィードバックを受けて変更となりましたが、完成まで詰めきった手応えがあります。

4名のプログラマー陣の存在も大きく、特に小林大樹さん(HAL東京)と小室龍平さん(工学院専門学校)は率先して周囲をサポートし、開発の安定化に尽力してくれました。
キャラクターが決められたルート上を進む「ライン追従移動」機能や、重心移動を画面に可視化するUIなども実装されました。最大の課題だったバランスWiiボードの接続は、機材不足により有線接続を断念し、Bluetooth接続と有志開発のツール『WiiBalanceWalker v0.5』で解決しました。

BitSummit本番と展示体験
7月18日(金) 早朝、夜行バスで京都入り。ついにBitSummitが開幕しました。初日のビジネスDayでは、企業や開発者の方々から「自動カーブ(ライン追従移動)が遊びづらい」という意見をいただき、夜に急きょステージを直線的な形へ修正。制作側が当然と思っていた仕様こそ、初めて遊ぶ人の視点を想像する必要があると痛感しました。
2日目の一般公開では、多くの来場者がブースに訪れ、バランスWiiボードの懐かしさや体感型ならではの面白さを楽しんでくれました。前日の修正で発生したバグを展示中に直す場面もありましたが、それも含めて熱気ある一日となりました。

3日目は『CEDEC』準備のため不参加。CEDECは国内最大級のゲーム開発者向けカンファレンスで、翌週に開催を控えていました。BSGJ2025の展示は仲間が最後までやり遂げてくれ、3か月に及ぶ挑戦はついに幕を閉じました。

終えて感じたこと
今回の制作では、
- 企画難航と方向転換
- 大規模な仕様変更
- 未経験機能の実装
- 課題との両立によるスケジュール調整
といった数々の壁がありました。
それでも乗り越えたことで、チーム制作力と課題対応力の成長を強く感じます。
他校との合同制作は、異なる専門性や技術力に触れ、自分のスキルツリーを見直すきっかけにもなりました。今回の経験と反省を糧に、次回のチーム制作、そして来年のBitSummitに挑みたいと思います。