編集はライターの夢を見るか?ゲームメディアの中の人が2017年を振り返ってぶつぶつ言う


年の瀬ですね。
2017年は思い通りの年になりましたでしょうか。

昨年の12月は

非キュレーションメディアはなぜキュレーションメディアに勝てなかったのか

という記事を掲載しました。
大手企業が運営する医療系メディアの問題を着火点に、ウェブ業界の大問題を社会にさらしたキュレーション問題。2017年はあまり話題に上がりませんでしたが、画像の盗用などは依然として行われておりなかなか根の深い問題です。恒常的な問題であるが故に常に話題になるということはなく、おそらくまた数年後にニュースをにぎわせるのではないかと思います。できればそういった悪い風習から抜け出して、ウェブメディアの信頼性の向上にしっかりと取り組んでいきたいものですね。

さて、本年2017年はどういう年だったかというと、私が運営しているゲーム情報メディア界隈は、昨年、一昨年などと比較すると静かな1年だったのではないかと思います。静かというのは順調だったということではなく、メディアにとって大きなネタに乏しい1年だったということです。

まずゲーム業界全体の流れとして、ソーシャルゲームのピークアウトからの減衰が大方の予想通りに継続しました。これは決してソーシャルゲームのゲーム的な価値が落ちたということではなく(ビジネス的な価値は落ちましたが)、スマートフォンの右肩上がりの普及増に伴って過熱していたソーシャルゲームが本来の立ち位置に戻りつつあるということだと思います。ソシャゲは大きな産業として今後も残っていくものの、「日本のゲーム市場はほぼスマホのソシャゲ」というような雰囲気は徐々に薄れていくように感じます。
この状況を受けてのゲーム系のメディアの淘汰は去年から始まっていましたが、今年の後半にはそれも落ち着いてきました。生き残っているゲーム系メディアは、一部の勝ち組はその構造の強化を促進し、その他のメディアは新たな成長のネタを探してチャレンジしながら模索している、という状況になっています。
次のネタとして、VR、eスポーツなど、新たな種が芽生えつつあるものの現状ではまだまだメディアの収益の軸になるというところまでは至っておらず、メディアの模索は2018年も続くと思われます。

ゲームメディアの悩みは続く

2017年のゲーム市場のニュースとしてはSwitchの大きな成功がありました。しかしPV数を収益に変えるという現在のゲーム系メディアの基本的な収益構造に対しては、主にユーザー数の絶対値の問題からメディアにとってビジネスとして即おいしいネタ、とはなりませんでした。スマホゲームには1タイトルで数千万人という稼働ユーザーがいた時代もあり、ゲームメディアがいかにこれに支えられていたかということを痛感するわけですが、この辺りはメディア側が積極的にビジネスの構造を進化させていかなければならないところだろうと考えます。
2018年こそは人気のソシャゲを追いかけていくだけではなく、先んじて価値の高い情報を発信しゲーム業界を盛り上げていくゲームメディア界隈でありたいですね。そのためにはゲームライターさんの力は絶対に必要です。

Switchの成功は明るい話題の1つ!

私のメディア単体で見ますと、メディアの構造変革を迫られた1年でもありました。
今年になってスマホゲームの「攻略」需要減が(私のメディアに関しては)顕著となり、対応策として、ニュース、コラム、取材、そして業界向けの情報発信など新たな取り組みを実施しました。これはつまり攻略メディアからの転身を図ったわけで、攻略のボリュームを減らしその他のコーナーに労力や資金を割り振ったということです。当然ビジネス上のリスクがあり失敗すればメディアが存続できないかもしれないということですが、ライターにとってより直接的なのは、今まで安定的にあった業務が減少しスキルの変化が求められたということでもありました。これは私のメディアだけではなくゲーム系の多くのメディアで起きているかもしれません。
ライターへのこの手の要求と相談は心情的に非常に苦しいものでしたが、その稼働をある程度確保するためにも私のメディアの場合はやむを得ない選択でした。ここは私のビジネススキルの不足も要因と思われ、もっと勉強して良いメディアにしていなかなければと痛感したものでもあります。

Googleトレンド=PV数ではないが、エンターテインメントの選択の幅が広がったことにより消費者側のニーズが多様化、相対的に「ゲーム攻略」への関心度は下がっていると思われる

攻略主体の時代にはあまり行っていなかった、ジャーナリスト的な立ち位置のプロライターさんへの発注も大きく増やしました。メディアにとっては収益源を模索中という段階での大きな投資になりますが、次の軸を作るうえでこの投資はどうしても必要でした。
ライターの側から見ると、このようなときにメディアに頼られるスキルを持っていれば逆に仕事が増えるということでもあります。ゲームメディアの状況は今後も変わっていくと思います。その時その時に単一的に需要が高いスキルを持っていることも大切ですが、長くゲームライターとして活動していくには、できれば「これはこの人にお願いするしかない」という状況を目指していくのが良いのではないかと思います。それが難しい、その前に収入が確保できなければ、という問題はもちろんあるのですが、やはり最終的なものとして頼られるゲームライターを目指していくのは良いことだと思います。そして執筆料は十分に高く設定するのが良いでしょう。高い執筆料については編集部との戦いもあると思いますが、その戦いこそが強いメディアを生むのであり、日本のメディア界隈はこの辺りがちょっと弱いのかなぁとも感じます。

東京ゲームショウ2017では取材班を編成し過去最大の記事数を投入

私のメディアの編集部が直接行う取材や記事執筆も大きく増えました。今まで攻略に集中していた編集部のノウハウも、新たなジャンルに対応したものに変化させる必要がありました。
編集というのは、サイトも構築し、収益構造も作り、そして取材も行い、記事も書ける、というジョーカー的な存在で、変革の時には積極的に現場稼働をすべき存在だとも思います。しかし一方で、1つのスキルに特化できないという弱点もあり、表面に露出する個々の記事の品質の担保や、執筆のスピードに顕著な問題が発生しました。
編集部が自ら稼働して多くを賄えば収益的には小さく生きていくことができる、しかしメディアとしての成長はそこで止まる、ということを実感した取り組みでもありました。
編集はマルチスキルの保有者である必要がありますが、裏を返せば、当たり前ですがライターよりもライタースキルは低いわけです。したがってやはり分業すべきで、そのためにはメディアとしての成長継続と、ビジネスとしての収益構造の変革が必要だなぁと、これもまた当たり前のことですが、改めて感じた1年となりました。

ゲームメディア編集者にとって、少なくとも私の場合は、ゲームライターは憧れの仕事です。なぜ私がゲームライターではないのかというと、そこのスキルがあまり高くないからですが、であれば編集としてライターと一緒により良いゲームメディアを目指せればと思います。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。
2018年が良い年になりますように!


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