以前、ゲームライターの仕事とデジカメについて書いたら、Sqool.netの加藤さんという人にたいへん評判が良かったので、調子に乗って第2弾を書いてみることにします。
圧倒的に室内撮影が多い特殊事情
前回もちゃらっと書きましたが、ゲームライターにとって写真撮影が必要なシーンは、おおよそ下記に絞られます。圧倒的に室内が多いんですね。
- イベント取材
- ブース撮影
- コンパニオン撮影
- 展示物撮影
- セミナー取材
- 講演者撮影
- スライド撮影
- インタビュー取材
- インタビュイー撮影
室内が多いということは、光量が不足するということです。昼間と同じような設定で撮ると、写真が暗くなります。そのため最近ではデジカメ側が気を利かせて、自動的に設定変更を行い(またはその複合技で)、綺麗な写真がとれるようにしてくれます。ただし、それぞれ限界があるので、次のような問題が発生します。
- シャッタースピードを遅くして、光をたくさん取り込もうとする→写真がぶれる
- レンズの絞りをあけて、光をたくさん取り込もうとする→そもそもコンパクトデジカメのレンズは、そこまでレンズが明るくない(=絞りをたくさん開けられない)ので、限界がある
- 撮影素子の感度を上げて、少しの光でも明るく写そうとする→写真がノイズだらけになる
安いデジカメでは対策に限界がある
このように、大前提としてゲームライターの仕事って、デジカメに厳しいシーンが多いんですね。そこで次のような対策が考えられます。
- 本体の手ぶれ防止機能を使う
- ストロボを使う
- 明るいレンズがついているカメラを使う
- 明るいレンズに交換する
- 高感度に強いカメラを使う
このうち一番簡単なのは1番目です。最近のデジカメの多くには、けっこう強力な手ぶれ防止機能がついています。ただし、いくら手ぶれが抑えられても、被写体の方が動いてしまっては、けっきょく写真がぶれてしまう。そのため、効果が限定的です。
続いて2番目です。もっともカメラの内臓ストロボでは限界があります。そのため、もしカメラにホットシュー(ストロボなどのオプション装置を設置できる箇所)があれば、外付けのストロボを購入されることをお勧めします。これだけでも、けっこう効果があります。ただし荷物が増えてしまうのが難点です。
3番目と4番目はともに「レンズの明るさ」が関係してきます。レンズの明るさはF値という単位で表示されており、標準的ななズームレンズを搭載したコンパクトデジカメでは、焦点距離に応じてF3.5~F5.6となるのが一般的です。レンズはF値が小さいほど明るい(=たくさんの光を取り込める)ので、F1.4~F2.8といったレンズを搭載しているデジカメに買い換えると、それだけ暗いところでも綺麗な写真が撮れるようになります。
ただし、絞りを開ける(=f値を小さく設定して撮影する)と、ピントがあう範囲が狭くなる(=被写界深度が浅くなる)ので、撮影時には注意が必要です。オートフォーカスだから大丈夫だと安心していると、手前と奧の人物でピントが片方しかあっていない、なんてことが発生しがちです。また、こういった明るいレンズを搭載しているデジカメは、けっこう高額なんですよね。そのため、思い切ってレンズ交換が可能なデジカメを購入してもいいでしょう。
最後に5番について。デジカメの高感度特性はざっくりいって、銀塩カメラのフィルム部分にあたる、映像素子の面積で決まります。通常のコンパクトデジカメは1/2.3型、または1/1.7型が主流ですが、これがフォーサーズやAPS/Cといった規格になると、ぐっと面積が拡大します。これだけで暗いところでもノイズを抑えて撮影できるようになります(参考記事)。ただし、映像素子の面積が拡大すると、当然ながらカメラ本体も大きくなります。
というわけで、こんなふうに暗いところでも綺麗な写真を撮ろうとすると、いろいろと手段を講じざるを得ず、いずれも一長一短なのですね。そのため開き直ってスマートフォン、あるいはコンパクトデジカメでいけるところまでいく、というのも一つの手だと思います。幸か不幸かWeb媒体では、そこまで写真のクオリティが求められないのも事実です。
また、特に最近のスマートフォンではカメラのスペックが高く、コンパクトデジカメよりも綺麗な写真がとれたりします。ぶっちゃけ、ブース取材クラスであれば、スマートフォンでも問題ないでしょう。もっともインタビュー取材など人物を撮影する場合は、先方にスマートフォンを向けるのもどうかと思いますので、避けた方が無難だとは思いますが・・・
コスパが一番高いのはAPS/C搭載機種
んでもって、そのうち「もうちょっと綺麗な写真が撮りたい」または「写真の成功率を上げたい」と思いはじめるようになったら、中級者へのステップアップの時期が訪れたと言えるでしょう。そこで自分のオススメですが、下記の3点セットとなります。中古の型落ち品なら5-6万円で揃うでしょうし、新品でも10万円でお釣りが来るでしょう。
- 映像素子にAPS/Cを搭載したデジタル一眼レフを選択する
- 標準ズームキット(予算に余裕があればダブルズームキット)を選ぶ
- 小さくてもいいので、外付けのストロボを購入する
ちなみに自分も2016年からニコンのD5500+標準ズームレンズ(AF-S DX NIKKOR 18-55mm)+スピードライトSB-300の組み合わせで仕事をしています。セミナー取材ではスライド撮影用にコンパクトデジカメを持っていったりしますし、インタビュー取材で自分が撮影する必要がある時は、より大型のD750を持っていったりしますが、9割がたD5500のセットで事足りています。ぎりぎり自分の鞄に入る大きさなのも気に入っているポイントです。
また、D5500ならではの特徴として、タッチパネル機能のついたバリアングル液晶があります。発表会などの人混みの中でも、バリアングル液晶を見ながら手を伸ばしてフレーミングし、シャッターボタンを押さなくても、液晶をタッチするだけで撮影できる点が予想以上に便利でした。キヤノンの現行機種ならEOS Kiss X8iなどでしょうか。自分は使ったことがないので良くわかりませんが、十分に仕事で使えるスペックかと思います。
なお、これより一回り小さいミラーレス一眼カメラを使われる人も多いのですが、自分はあまりオススメしません。前にも書きましたが、ファインダーを搭載していない製品が多く、バッテリーの持ちが悪いからです。もしミラーレスが希望なら、ファイダーがついているオリンパスのOM-D E-M10シリーズが良さそうです。ただし、その場合でも必ず、外付けストロボを購入されることをオススメします。鞄の中に入れておくと、ここぞというところで役に立ちます。
まあ、今使っているデジカメに不満が出てくるということは、それだけ取材系の記事を書く機会が増えているわけで、それだけ仕事に幅が出てきているということだと思います。良い仕事をすれば、それだけ自分の評価が上がりますし、そのためにはある程度の機材が必要になりますので、何らかの参考になれば幸いです。
*なお、「価格よりもサイズが小さい方が良い」という方には、APS/C規格の映像素子を搭載したキヤノンのコンパクトデジカメ「PowerShot G1 X Mark III」と「スピードライト270 EX II」という選択肢もあります。3倍ズーム(24mm~72mm相当)のズームレンズを搭載し、レンズ交換はできませんが、沈胴式で非常にコンパクトな点が特徴です。ただし価格も合計で13万円くらいします(2018年1月7日現在)