10月12日から東京ネットウエイブで後期授業が始まりました。すでに何度も書いているように、本授業は(ゲームデザイナー志望の学生に対して、ゲームライティングにも興味を持ってもらえるように)「ゲームのおもしろさを構造的に分析して、文章で説明できるようになる」ことをコンセプトに掲げています。その上で前期はさまざまなフレームワークを紹介して、「ゲームの全体像をつかむ」ことに挑戦してもらいました。後期はここから一歩進んで、よりゲームの中身について詳しく見ていきます。
その上で今回は後期の最初ということもあり、自分のゲーム史のふり返りをやってもらいました。実はこの演習は、古くは「エアーズアドベンチャー」のゲームデザイナーとして、最近は千葉商科大学でゲームデザイン教育も行われている、ゲームクリエイターの柴田賀盆さんが主催された「テレビゲームワークショップ」の内容をベースにしています。賀盆さんのワークショップでは、横長の巻物のようなシートに書き込んだり、シールを貼ったりして自分年表を作るというものでしたが、ちょっと大変だったのでExcelとWordでまとめてもらいました。
このワークショップを行ったときに思ったのですが、正規のゲーム史と自分のゲーム体験には、当然ながらズレが生まれます。そして、そのズレがその人ならではのゲームに対する価値観を作り上げるベースとなっていきます。しかしゲームは体験ベースの娯楽なので、どうしても自分のゲーム体験が正規のゲーム史を上塗りしてしまう傾向があるんですね。ゲームの遊び手なら良いんですが、作り手になりたいなら、それでは困る。どこかで自分のゲーム体験を客観視してもらう必要があるなあと思い、このタイミングでの演習となりました。
やってみて思ったんですが、今の学生は1999年生まれが主流で、いきなりWii、DS世代なんですね。それが中学~高校生あたりでスマートフォンを入手し、ソーシャルゲームに移行していく。それと並行して、一部の学生はNINTENDO64やPS2といったハードを中古屋で買ってきて、レトロゲームに触れていく。非常にユニークな世代だなと思いました。また、子供の頃に両親とゲームを遊んだことが専門学校に進むキッカケになった、という学生が多いことも印象的でした。他にDSの「うごくメモ張」にハマった、という学生も数名いました。
その上で、これは授業でも強調しましたが、今の学生は大半が就職後、スマホゲーム開発を手がけていきます。スマホゲームの多くはビジネスモデルがF2Pなので、できるだけ多くの人に遊んでもらえるゲームを作る必要があります。その一方で、課金の中心層である30~40代のゲーマーを意識する必要も出てきます。つまり、自分より年上の世代に課金してもらえるゲームを作る必要があるわけですね(そこでIP活用というわけですが・・・)。そのためには、自分の個人ゲーム史を作って年上の世代と比べてみると良さそうな気がします。
また、家庭用ゲーム開発においては、今後ますます海外展開が重要になっていきます。そのためには海外のゲーマーの個人史を知って、自分と比べてみる経験も求められそうです。幸いにも東京ネットウエイブは1/3が留学生なので(中でも多いのは中国)、良い比較材料になりました(もっとも、日本に留学に来ている時点で、すでに相当なバイアスがかかっているわけですが・・)。こんなふうに今後も、学生の視野が広がるような授業にしていきたいところです。